時給300円の死神 の読書感想
久しぶりに良い本を読んだので紹介したいと思います。
時給300円の死神 藤まる
「それじゃあキミを死神として採用するね」 ある日、高校生の佐倉真司は同級生の花森雪希から「死神」のアルバイトに誘われる。曰く「死神」の仕事とは、成仏できずにこの世に残る「死者」の未練をはらし、あの世へと見送ることらしい。あまりに現実離れした話に、不審を抱く佐倉。しかし、「最後まで勤め上げれば、どんな願いも叶えてもらえる」という話を聞き、半信半疑のまま死神のアルバイトを始めることとなり——。初恋相手の幼馴染、出産直後の母親、虐待を受ける子ども……様々な死者が抱える、切なすぎる未練、願いとは——。暖かな涙が止まらない、ヒューマンストーリー。
この本を手に取ったきっかけは表紙です。
この表紙のイラスト凄く幻想的で自分好みだったのでそのままレジに持っていきました。
死者は【もしあの時に死ななかったら】の世界「ロスタイム」を過ごしており、自分が納得する、もしくは時間切れになることで成仏できます。
死者が成仏した時点で世界は【あの時に死んだ正しい世界】に修正され、その時の記憶は死神以外は皆忘れて修正後の記憶で過ごすことになります。
死者があげたものややった事(地面に大きな穴を開けるや人を殺す)は全て無かったことになります。
そんな理不尽過ぎるロスタイムの中で死者は何をして、また死神は何をしてあげられるのか…というお話です。
未練を晴らすと聞けば良いように思えますが、終わったあとに全部元通りなので復讐とか懺悔とかしても正直意味無いんですよね。
ロスタイムの中で自分の未練とそれが無理という現実の中でどう折り合いをつけるかという葛藤が共感できたり感動できたりしてとても良かったと思います。
これを読みながらちょっと仮面ライダー電王やシュタインズ・ゲートを思い出しました。死神だけが死者のロスタイム中の行動や想いを覚えている所とか。
時給300円っていうのも好きです。
完全に無償な人助けというわけじゃないけど、仕事でやるには安すぎる時給。
それでも死神は死者の願いを出来るだけ叶えて送り出す。
その意味に時給は関係ないのかもしれません。
2人の家庭に問題がある男女が死者と触れ合い、悩んで悩んで【幸せ】とは何かを探したんだと思いました。
例え記憶が消えて、皆が忘れてしまっても彼ら、彼女らの想いは全部無かったことにはならない。
最後がご都合主義で解決!ではなく、どうにもならないことはどうにもならないってなっていたのが個人的には好きです。
文体には好き嫌いが別れそうですが1~2時間くらいでよめるので興味を持ったら手に取ってみてください
よかったらこちらもどうぞ。