千秋ちゃんの観察日記

大学生が日常を綴る何か

君の嘘と、やさしい死神 読書感想

きっと奇跡は起こらない。

―——最期の思い出を、ください。

 

君の嘘と、やさしい死神 青谷真未

(P[あ]8-4)君の嘘と、やさしい死神 (ポプラ文庫ピュアフル)

 

通り雨が過ぎて虹が出た昼休み、高校二年の百瀬太郎は同学年の美園玲と運命的に出会う。美少女なのにクラスメイトとどこか距離を置いているクールな玲に、なぜか百瀬はなつかれる。幼少期のトラウマで「嫌だ」と言えない性格も手伝って、百瀬は強引に文化祭の準備を手伝わされる羽目になり、「ある作戦」を実行するため奔走するうち、二人の気持ちは近づいていく。そんな時、逃れられない過酷な出来事が二人を襲う。感動、切なさ、悲哀、そして愛しさ…温かな涙が溢れる、究極の恋愛小説。

 

これも表紙&帯買いしました。

買ってから気づいたのですが読書メーター「文庫部門」読みたい本ランキング一位だったみたいです。

 

あらすじのような内容まとめ

 

 

時期は夏休み前。

断ることができない主人公百瀬は文化祭実行委員のちょっとした企画に手伝わされ、場所だけが伝えられるメールを頼りに「運命の人」なるものを探すようになる。

期限の少し前で「運命の人」役の美少女、美園玲と出会い押し切られるまま文化祭の手伝いを頼まれる。

その手伝いとは文化祭の体育館で出し物の間の時間に乗り込んで「落語」を披露するという彼女曰く「落語テロ」

またも完全に断ることが出来ずにずるずる手伝うことになり、どうにか諦めさせようとするが彼女の本気具合や考え方、想いを知り徐々に一緒に落語テロをやり遂げたいと考えるようになる。

 

落語に使用する着物を買いに行き、流れで夏祭りに向かうことになる。

花火が上がる前、「嫌だ」と言えない理由が幼少期にワガママをいって妹の病気を悪化させ、殺しかけた事にあることを告げる。

すると彼女は「これ以上悔いを残したくない」と自論を告げ、打ち上がった花火も自分の目でしっかり見るからこそ記憶に残るとカメラの使用をやめさせた。

 

文化祭当日、いつまでも来ない彼女に焦りを感じていると1本の電話が入る。

携帯を持たない彼女からの公衆電話からの電話。

お腹が痛いと悲痛な声をあげる彼女から先が長くないことを聞き、病院に行くように言い舞台には練習に付き合った自分が立つことを決意する。

 

舞台は無事に大成功。

翌日彼女の病室に訪れると癌であることが告げられ、もうここに来ないで欲しいと断られる。

「嫌だ」と言えない主人公はそのまま立ち去るが「運命役」になった真相を知り、彼女との「後悔」を残さないように再び病室を訪れる。

 

病室で彼女と向き合い色んな話をする。

彼女が考えた落語「死神」の結末。

そして退院したら寄席に連れて行ってと約束する。

 

彼女が体育館の上で落語がしたかった本当の理由。

それを知る頃には彼女はもうこの世にはいなかった。

 

感想

めちゃくちゃ好きです。

主人公の百瀬はどんなことを頼まれてもコミュニティから追い出されるのが怖くて断れない気の弱いところがあって、彼女のどこまでもまっすぐな感じとの対比が良いと思いました。

ここまで過激ではなくても「ここで断ったら嫌われるだろうな」という理由で大変な役目を引き受けることが実際にあります。

主人公の場合、義理のお父さんと妹という曖昧な関係の時に自分の意志を通して妹を大変な目に合わせたというトラウマがあるのでよっぽどです。

でも引き受けてばかりだとそれが当たり前になるのも事実なんですよね。

そんな主人公が彼女に押される形で落語の舞台に立って、後悔しないように断られても自分の意志を告げるところは成長を感じられました。

なんだかんだ彼女のために体育館を押さえたり、店番を断ったり出来るんですから普段は勇気が足りなかったんだと思います。

 

一方彼女は悔いがないように生きようとしていました。

行き会ったりばったり感はちょっとハルヒを連想させました。

主人公がトラウマに襲われたときに話した「悪夢は幸せな結末にして色んな人に話すと忘れる」が彼女のやりたかったことに結びついて思わずうるっときました。

タイトルの死神って落語のタイトルと主人公のことだったんですね。

人の寿命を奪う(寿命を気にする)死神より最後まで自分らしく生きてさっぽりと死ぬやさしい死神になりたい。

自分の無茶に付き合ってくれた死神(主人公)に最期を見届けてほしい

 

彼女の真意はどこまでも純粋でまっすぐだった。

携帯を持たない理由も好きでした。

「携帯とかで記録してると、皆安心してよそ見するでしょ。後でちゃんと見返せばいいや、なんて言いながら、結局見もしないでデータだけたまってくだけでしょ?」ってセリフ好きです。

彼女ががいた形跡はあまりにも少ないけど記憶にはどこまでも鮮明に残ってるんですよね。

 

あと主人公の家族の関係も好きでした。

主人公は必死に家族のつながりを保とうとしないと取り残されると考えていましたが、もうとっくに家族だったんですよね。

幼少期の出来事も主人公のこと誰も恨んでないですし。

彼女と会うか迷ったときにお父さんに相談したり、妹から扇子を貰ったりと家族の繋がりが見えてきて、思ったより家族って繋がり強いんですよね。

 

ファンタジーじゃないから彼女はそのまま死んでしまうし、生き返ったりしない。

だけど彼女が残したものは記録にはないけど、記憶には確かにあってそれがこれからも主人公を支えてくれると思います。

 

彼女のように好きなように生きてみたいと思う一冊でした

 

 

(P[あ]8-4)君の嘘と、やさしい死神 (ポプラ文庫ピュアフル)

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